《金シャチ横丁・2》 市民大討論会 2012.2.19


名古屋市が、名古屋城の将来像を市民や有識者が話し合う大討論会を、2月19日(2012)に開催すると発表しました。



<中日新聞>

名古屋市は16日、名古屋城の将来像を市民や有識者が話し合う「大討論会」を2月19日に開くと発表した。河村たかし市長が提唱する天守閣の木造復元や、正門前に城下町を再現する「金シャチ横丁」構想の議論を盛り上げるのが狙い。意見を発表する市民や参加者を募集している。

 討論会は午前10時から、市公館で開催。市の担当者が整備計画などを説明した後、中部大の片岡靖夫教授が「天守閣木造復元の技術的課題」と題して講演する。

 事前に公募した市民6人が1人3分以内で意見を発表した後、有識者によるパネルディスカッションを行う。司会は瀬口哲夫・名古屋市立大名誉教授。パネリストは片岡教授のほか古池嘉和・富山大教授、麓和善・名古屋工業大教授、山本勝子・知多ソフィア観光ネットワーク代表、河村市長が務める。市民との意見交換も予定している。

 意見発表の希望者は、名古屋城の目指すべき将来像と天守閣の木造復元に対する意見と住所、氏名、電話番号をA4用紙1枚に記載し、〒460−0031 名古屋市中区本丸1の1、名古屋城総合事務所整備室へ郵送するか、ファクス=052(201)3646=で申し込む。

 一般参加の定員は150人。希望者は往復はがきに住所、氏名、電話番号と返信の宛先を記入して、整備室に申し込む。いずれも2月6日必着。 



このニュースを知るや、私は早速、資料を作成し、送付しました。
30数名の応募のなかから、6名が選ばれ、晴れて私も、市民代表に選ばれました。



平成24年2月19日、
当日は、河村市長をはじめ、有識者、市民(183名)の前で、スピーチを行ないました。
3分きっかりと時間が決められておりましたので、あれやこれや言いたいことがいっぱいあったのですが、
スピーチの内容をとにかく削りに削りました。
3分というのは、長いようでもあるし、短いようでもあります。
もともと、金シャチ横丁建設予定地の
「大イチョウやオガタマノキなどの樹木の保護」を訴えることが眼目だったので、
そのテーマ一本にしぼることにしました。

最終的に、なんとか以下のようにまとめました。

私は瑞穂区の汐路の出身で、中学校では郷土史部でした。いまでも名古屋の郷土史愛好家です。
金シャチ横丁の建設予定地には、さまざまに貴重な樹木が生存しております。

市内最大の大イチョウ
市内最大で最美、もっとも美しいと評されるオガタマノキ
市内最大のイヌマキ
名古屋城最大のムクノキ
相当に古いイブキ

…などです。これらは植物として、生態系にとって貴重なだけではなく、歴史の生き証人としても、たいへん貴重な存在です。

例えば市内最大の大イチョウは、名古屋城内の総鎮守であった那古野神社の、かつての《ご神木》です。
この大イチョウは、幕末に描かれた尾張名所図会にもたいへん克明に描かれており、まさに歴史の生き証人といえる存在です。

また、市内最大・最美のオガタマノキは、古来より、サカキのように神事に使われた木でした。その場所が古くから神域であることを語るものです。

このようにして、古木名木の一本一本に意味があり、彼らは生(なま)の歴史を、我々に身をもって語ってくれる存在なのです。
ですから金シャチ横丁開発にあたっては、こうした敷地内の貴重な樹木を絶対に枯らさないよう、逆に、保護力を高められるよう、万全なる保全をお願いしたいと思います。

また、建設予定地の北東部分には、江戸時代、天王坊後園と呼ばれた庭園が存在し、今でもその遺跡がわずかながら残っておりますが、
この天王坊は当地方最古の寺院跡であり、
家康が幼少の頃に幽閉されていた場所であり、
信長が学問を学びに通った場所でした。

とらわれの家康はその庭園で心を慰められたでしょうし、家康六歳、信長十四歳、後々波乱の人生を歩むべき運命のふたりが、そこで初めて出会ったかもしれない、そういうドラマティックな場所なのです。

例えば、この天王坊後園の遺跡を復活させ、大イチョウなどの樹木が生存する部分を含めて、敷地の一部を庭園にするのもひとつの案だと思います。

名古屋城には水が流れる庭園がないので、池泉庭園がいいと思います。人は水の流れに集まるものです。余談ながら、水の流れのないことが、城内の景色を動きのないさびれた感じにしているしているひとつの原因だと思います。

私は多くの歴史にまつわる観光地を歩きましたが、観光客にとっての魅力という意味で、肝心なのは、本物と偽物のバランスだと思います。この場合、本物とは、大イチョウやオガタマノキなどの貴重な樹木、そして、天王坊後園遺跡のことです。

本物というのはただそこにあるだけで、おのずと感受される《凄み》を持っている。その《凄み》を生かすも殺すも、演出次第です。演出がなければ、寂しいし、一般受けしない。演出の方向性を間違えば、本物を殺してしまう。

本物には魂があります。その魂をこそ、リピーターは味わいにくるのです。

たくさんのお客さまに名古屋にいらしていただくためにも、どうかその本物と偽物のバランスに気をつけて、本物をこそ、生かしつづけるための演出をお願いしたいと思います。


 私のスピーチに対して、以下のような、たのもしいコメントをいただきました。

河村市長 : 「木は絶対、切っちゃいかんと思っております。木はおじいちゃんとおんなじだでね」

瀬口教授 : 「大イチョウなどの木を守るのは大切なことだと思います。天王坊後園を復活させましょう」 (大討論会修了後)




以下に、私が当日メモしました、討論会全体の様子を載せておきます。ご参考までに……。

「名古屋城の将来を語る市民大討論会」


平成24年2月19日 10:00開会
市民183名(予定)が参加



1、名古屋城の現況説明 (名古屋城総合事務所)


■全国の観光客数比較(H22)

1、首里城(沖縄) 167万人
2、二条城(京都) 157万人
3、名古屋城 152万人
4、熊本城 144万人
5、大阪城 137万人

※意外なことに、姫路城はランキングでかなり下のほうだった。46万人


■現在のコンクリート天守閣

五十年以上たつと、登録無形文化財
1959に建ったので、登録すれば、無形文化財になる。

・名古屋城・熱田神宮を爆撃されたことで、相当に名古屋の人は意気消沈した。
 アメリカ軍の狙い。

・1959年、「二度と燃え落ちない天守閣を」という気持ちのもとで作られたコンクリート天守閣。
 当時の市民には、言い尽くせない熱い想いがあった。

・ワルシャワでは、今でも、戦災で燃え尽きた街の写真を売っている。その気持ちを風化させまいという執念。
(瀬口教授)


・コンクリート耐用年数は残り40年以上

・取り壊し、更地にするだけで320億円必要 + 木造天守建築費?億(100億円以上?)


■木材

・柱は節の目立たない木曽ヒノキの優良材が必要
・樹齢300〜400年の大径木(直径60センチ以上)

・調達は困難



2、片岡靖男 中部大学教授 「天守閣木造復元の技術的課題」

早稲田大学大学院 理工学研究科修了。
伝統木造建築の耐震性能向上のための新しい耐震要素の開発研究、耐震性の評価法の提案を行なっている。
熱田神宮や永平寺の建造物の構造機能評価を実施。


■復原と復元
「復原」 … 最初のものに戻す
 ↑
 ↓
「復元」 … 宝暦の大修理 (設計図あり) ※今回はこちら


■大洲城の例

愛媛県大洲市 大洲城・木像復元 2004/7

 面積=1/4 体積=1/8


「募金」ならぬ「募木」活動 個人所有・寺・神社などの木を募る活動


■木造天守閣は、実は火事に強い

・大断面の木像建築は火災に強い
 表面が炭化すると(酸素がなくなり)中が燃えなくなる
 たきぎの例:芯になる種木はいつまでも残っている

こうした理論から、火災の問題は解決されつつある


※戦争以外で、火事(失火)で燃えた天守閣というのはない。
(討論会終了後、博士に聞いた)


■名古屋城の美しい石垣

・美しい曲線はどうやって得られたのか、さまざまな関数を当てはめてみた

 ⇒ 懸垂線ではないか(まだ仮説であるが)

 懸垂線 = 高低のある二地点のあいだに、紐を垂らした時にできる自然のカーブ。
         長さと重さで決まる。



3、市民の意見発表

三十数名の応募があり、そのうち六名が選出。
持ち時間はひとり、三分きっかり。

一人目

・櫓なども復元してほしい
・忠実に再現してほしい


二人目

・金シャチ横丁は賛成
・「三英傑・宗春館」を造ってほしい
・モニュメント・橋・アーチなど、観光客の気持ちをもりあげるものにも力を入れてほしい
・よその真似はいただけない。「横丁」という言葉は使わないでいただきたい。


三人目(小滝ダイゴロウ)

・金シャチ横丁建設予定地に生存する、貴重な樹木を守ろう!
・建設予定地には、天王坊後園という遺跡も。
・池泉庭園にするべき


四人目

・木造天守閣賛成
・本物がほしい


五人目

・集成材(木を寄せ集めて作る)はやめてほしい
・真のプロを使って復元してほしい

六人目

・例え木造天守閣を造ったとしても、それは本物ではなく偽物
・今の天守閣は、二度と燃えない天守閣を、という市民の熱い想いでできた。それこそ本物。
・河村市長よ、他人の意見を聞く耳を持て



4、パネルディスカッション

(話を聞くのに夢中で、メモが疎かになりました)

<コーディネータ>
瀬口 哲夫氏 名古屋市立大学名誉教授

東京大学工学系大学院修了。歴史的遺産を活かしたまちづくり、都市景観や土地利用を考慮した
都市計画について研究し、中心市街地の活性化や美しいまちづくりの実践活動を行なう。

・東山のように地形に沿った道こそが美しい、まっすぐな道はおかしい、という感覚が、 昔の人にはあった。

・建設費は、市民の数と建設の年月を考慮すると、市民一人につき、一年に千円という計算。

<パネリスト>

片岡教授
・四方松は、入手困難
・石垣は今のコンクリート天守を支えられるほど充分な補強がしており、手をつける必要はない。
・その石垣の上に、軽い木造天守を乗せる。

古池 嘉和氏 富山大学教授

麓(ふもと)和善氏 名古屋工業大学大学院教授
・豊富かつ、精細な資料が残っているのは、全国でもここだけ。
・史実どおりに復元することが大事、そうでなければ価値は出ない

山本 勝子氏 知多ソフィア観光ネットワーク代表
日本福祉大学福祉学部卒業。
学・産の連携で地域振興策を提言していく知多ソフィア観光ネットワークを設立。
知多半島ビジターズ戦略の具体化を図り、現在、知多半島観光圏協議会副代表。知多半島総合研究所副所長をつとめる。


河村市長
・名古屋城が燃え落ちたのは、5/14の空襲でなく、3/19だったという説もあります。
・熱田神宮は草薙の剣が避難した翌日に、空襲で燃え落ちた。草薙の剣はギリギリ助かった。
・…など、多くの郷土史知識を披露。

・観光は度外視
・まずは、名古屋人が自慢できる物をもたなかん。(それを持った時、初めて、観光に心がむく)

・車椅子の方が木造天守では登れなくなる ⇒ おぶって登る。
・減税した分のお金を、みんな名古屋城への募金に使ってちょ。



5、会場の意見

・ソーラーパネルを張りめぐらせ、名古屋城の電気はすべてそれでまかなうべきだ。
・東北の人は苦しんでいるのに、こんな能天気な話をしていていいのか、という思いもあります。
・税金ではなく、すべて、募金で行なうべき。
・今の天守閣で充分、内装を変えるだけで、魅力的なものになる。
・この討論会の総括をぜひしてほしい。なんらかの結論を。
・木造建築は是非やるべきだ。大きな夢が必要なんだ。これは種まきで、市民みんなでそれを育ててゆくんだ。


《金シャチ横丁・1》 建設予定地について
《金シャチ横丁・3》 その後の動き
《金シャチ横丁・4》 オープン

HOMEにもどる




※ 画像をクリックすると、名古屋市の「なごや緑の基本計画 2020 〜 緑と水の豊かな自然共生都市めざして」 に、リンクします。