この段落はいささか真面目な話になる。
中華料理店症候群というものについて、ある程度の概略を求める方々の一助となれば幸いである。
■ MSGとは、マイケル・シェンカーとは何の関係もなく、グルタミン酸ナトリウムのこと。
この物質は化学調味料として用いられる。
中華料理店では、大量にこの種の化学調味料を使用するため、中華料理店と同症候群が結びつき、
中華料理店症候群の名前がついた。
MSGに関する様々な呼び方の関係は次のとおりである。("=" … イコールを表す)
MSG = Monosodium Glutamate = グルタミン酸のナトリウム塩 = グルタミン酸ナトリウム = グルタミン酸ソーダ
= アミノ酸の一種であるグルタミン酸の2つの酸性基のうちのひとつに、ナトリウムがついたものの結晶
>ウィキペディア : グルタミン酸ナトリウム
■ ただし、うまみ調味料関連の会社のサイトなどを見てみれば分かるのだが、
そういった会社は、中華料理店症候群とMSGの関係を否定している。
…ということで早速、某大手有名会社に電話してみた。回答は次のようなものだった。
・グルタミン酸ナトリウムと中華料理店症候群とは関係がない。根拠のない話である。
・中華料理店症候群との関係において、当社では商品の安全性を科学的(二重盲検法)に証明し、
FDA、WHO等にデータを提出してある。
・上記の事に関しては、現在特に、当社が一般向けに表明した論文やコンテンツはない。
■ …こうした某大手有名会社が言うように、MSGと中華料理店症候群は本当に関係ないのだろうか?
反対に、MSGと中華料理店症候群は関係があるといっている人もいる。
本当のところ、どちらが正しいのだろう?
MSGに対する科学的調査周辺の、歴史的な経緯を調べてみた。
1988年 |
国連食糧農業機構 (FAO) と世界保健機構 (WHO) の食品添加物専門家合同会議 (JECFA) が、
ヒトで二重盲検の詳細な検討を行なった結果、
グルタミン酸ナトリウムが中華料理店症候群や他の特有の障害の原因であることを確認することはできなかった。
グルタミン酸ナトリウムの1日許容摂取量を特に定める必要は無いと決定し,
また妊婦や幼児における特別な注意についても触れなかった。
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1991年 |
ヨーロッパ委員会の食品科学会議 (SCF) も同様の結論に達する。
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1995年 |
実験生物学会連合 (FASEB) から米国食品薬品局 (FDA) に報告書が提出される。(詳細は下記)
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■ FDA(米国食品薬品局)とは、アメリカにおける、日本でいえば厚生省のようなもの。
>ウィキペディア : FDA
MSGの安全性については現在のところ、FDAのレポートが、最も信頼できる内容なのではないかと思われる。
下記アドレスから、そのレポートを見ることができる。
http://vm.cfsan.fda.gov/~lrd/msg.html
察するところ、FDAの結論は要するに、
「MSGは安全である。しかし、ある人々はMSG複合兆候を引き起こす場合がある」ということらしい。
MSG複合兆候(MSG symptom complex)とはなにかというと、レポートの下のほう、
" 1995年のFASEBレポートの主要な調査結果"の箇条書きに書いてあるので、そのまま訳す。
(注:筆者が勝手に訳したものであるので、この訳文・訳語に責任は持たない。
まじめに参考にする場合はFDAの原文を参考にする事)
[引用:訳]
・人口に対するパーセンテージはよくわからんが、ある人々はMSGに反応し、次のような特徴をもつMSG複合兆候をひきおこす
・首のうしろ、前腕、および胸の灼熱感
・首の後ろの、腕や背中にまで広がる麻痺
・顔、こめかみ、背中の上部、首、腕、の、うずき、微熱感、衰弱
・顔の圧迫感、締め付け感
・胸痛
・頭痛
・吐き気
・心臓の鼓動が速くなる
・喘息を伴うMSGに耐性がない体質の人々における、気管支痙攣(呼吸困難)
・眠気
・衰弱
・また、健康ではあるがMGSに耐性がない体質の人々は、
空腹状態で(あるいは他の食べ物をとらずに)MSGを3g以上摂取すると、
一時間以内にMSG兆候をひきおこす傾向がある。
グルタミン酸塩を扱う食物の標準量は、MSG0.5グラム未満である。
反応が起こるのはほとんど、MSGの大量摂取、あるいはスープなどのような液体によるMSGの摂取の場合である。
・重度の、コントロールが十分でない喘息は、MSG複合兆候を引き起こしやすくさせるかもしれない。
・グルタミン酸塩やMSGの摂取が、アルツハイマー病、ハンティングトン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、エイズ痴呆、
またはいかなる他の長期的・慢性の病気を引き起こす恐れを示す証拠はない。
・グルタミン酸塩やMSGの摂取が、脳障害を引き起こすか、または人間の神経細胞を損なう恐れを示す証拠はない。
・人間の体のビタミンB6のレベルは、グルタミン酸塩の新陳代謝において役割を果たす。
必要最低限のB6の摂取の考え得る影響は、今後の研究課題だ。
・「タンパク質のなかのグルタミン酸塩のレベルが、体に悪影響を引き起こす」だとか、
「製造されたグルタミン酸塩は、食物のなかのノーマルなグルタミン酸塩とは異なった効果を持つ」だとかいう事には、科学的根拠がまったくない。
[引用:訳、ここまで]
これを読めば、「MSG複合兆候」なるものが、中華料理店症候群の諸症状と同じである事に気づくだろう。
「MSG複合兆候」と「中華料理店症候群」は内容的に同じ。
であるならば、「グルタミン酸ナトリウムと中華料理店症候群とは関係がない」という言葉は誤りとなる。
結論はこうである。
「グルタミン酸ナトリウムは、MSG複合兆候(=中華料理店症候群)を引き起こす。
FDAはこのことを認めている」
■ 中華料理店症候群を扱った多くのサイトなどに誤りが見られるが、上のように、
FDAは、MSGによってMSG複合兆候が引き起こされることがある事実を、認めている。
「グルタミン酸ナトリウムと中華料理店症候群とは関係がない事は科学的に証明されている」だとか、
「中華料理店症候群は、思い込みでなる」とか、
言っている人や会社はすごく無責任だと思う。
MSGによって苦しみを味わう人が実際にいるのに、そうした人がごく少数だからといって、
その事実を無視してしまってもいいのだろうかねえ。
体験談をみると、なかには筆者よりももっと酷い症状の人だっているようだよ。
醤油を大量に一気飲みしたら死ぬらしい。だからといって「醤油=危険」とはならない。
なぜかといえば、普通はそんなに大量に飲めないからだ。
もし醤油が飲むのに好ましい味で、大量に飲めてしまったら「醤油=危険」となる事だろう。
MSGというものは、大量に飲めてしまうのである。
MSGは、一部の人々にとっては、たいへん危険なのである。
筆者の調査では、この報告書以後の中華料理店症候群の足取りがつかめなかった。
1995年からもう十年以上も経っている。なにか新しい論説が出ていてもおかしくないと思う。
なにかご存知の方がいらっしゃれば教えていただきたい。
■ さて、筆者の実家では、母親は料理のとき、うまみ調味料は使わなかったので、
きっと筆者は他の人より耐性がないのだろう。
大好きなラーメンで、こんなことになってしまうとは、世の中せつないものである。
だが要は、ラーメンを食うときは昼飯を抜かなければよいのだ。スープも飲みきらないほうがよいだろう。
もし読者諸氏が同様の症状に見舞われたときは、安静にして横になっているしかない。
一時間くらいで症状はおさまるだろう。
そして、次からは注意してラーメンやチャーハンを食いたまえ。
ファミレス等のラーメンも危ないぞ。
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