生 米 地 獄
 




  守山に住んでいる筆者の母が、あまっているからと、米(約5kg)をうちに持ってきた。

うちの米櫃(というかプラスチック製の密閉容器)は10kg分入るもので、すでに5kg分の米で埋まっていたが、5kgと5kgなら10kgでちょうどよい。

ちょうど満杯になる、などと軽く考えながら、翌日、何も考えずに、もらった米を米櫃に移し変えた。

ズサァーッと5kg分の米が米袋から米櫃にむかって勢いよく流れ込んでゆく。なかなか心地のよい作業である。

異変に気づいたのはほとんどの米を流し終える頃だった。





ん? まてよ? なんじゃこりゃーーッッ!!

















蟲が大量発生しています……







慌てて母の持ってきた米袋の残りをよくみりゃ 蟲どもの大天国 ではないか!

オウマイゴッド! ファッキンクレイジイ! ホウリイシット!!

なんてこった! うちの米にまぜちまったじゃねえか!



とりあえず、もう仕方ないので、筆者は気もくるわんばかりの最初の恐慌から覚めると、

お米の国の大統領を見習って、蟲には人間以上のいかなる力を持つことも認めぬ、と宣言するや、

米を一合づつバットに取り分けて蟲を一匹残らず排除する、というなんとも無謀な大虐殺、大掃討作戦に出たのであった。


しかし、その大量のうごめく蟲を捕まえて排除、時には、ぷちりとひねりつぶすという行為のなんたるあさましきこと、

筆者は背中がぞわぞわと冷たくなっていくのを必死にこらえるのであった。



そのうちに学生時代の記憶がまざまざと筆者の胸によみがえってきた。

学生時代も筆者は自炊だった。

米を米櫃に移し変える途中に、いくらか絨毯の上にこぼしてしまい、もったいないからと、拾って米櫃に入れなおした。

一月後、米ももうそろそろ尽きてくる、という頃になって、筆者はある異常に気づいた。

米が異様に小さかったり、青黒かったりするのだ。

よく調べてみると米びつの下のほうは厚さ1cmほどの 白い砂の層 になっていた。

さらによく見てみるとその砂粒のひとつぶひとつぶが高所から見た群集のごとく自由意志でうごめきまわっていた

千匹? 一万匹? 多すぎてよくわからないが、無数の 砂粒ほどの小さな蟲が層となるほどに大発生 していたのであった。



俺は今まで知らずにこんなものを食っていたのか……(涙)。



おそらくそれは、こぼした米を絨毯から拾って入れもどした際に付着したダニだったのかもしれない。

その時は米の量が残り少なく、あまりにもミクロの世界すぎて太刀打ちできそうもなかったので、有無を言わせず捨てた。

あの時もおおいに背筋を凍らせたものだったが、今回はそれ以上の衝撃だった。

今回、筆者の背筋を凍らせた蟲どもをご紹介しよう。



「黒い鼻の長い虫」

全長2ミリ。こいつが一番見つけやすく、一番捕まえやすく、一番多い。ドラクエでいえばスライム的存在。「ゾルゲ」と命名。


「白い芋虫」

全長1cm。鼻が赤く、糸を吐く。うねうねと敏捷に動く。黒い虫の幼虫かと思われる。米に紛れ見つけ難い。「チュミーン」と命名。

こやつがねばねばした糸を吐くために、所々に「糸をひく米のかたまり」を発見。有無を言わせずごみ箱に放り込む。


「でかい羽虫」

全長3cm。なんでこんなでかいんが米のなかにおるねんっ! と、突っ込みをいれたくなるような、ラスボス的存在。「ザ・デビル」と命名。

















 ……掃討作戦開始から三時間……

ようやく作戦は終了した。

筆者の手は殺害し、押しつぶした虫どもの漿液にまみれている。おぞましい。

みつけた虫は完全に駆除したものの、見逃したもののある可能性は否めない。

そして、卵が残っている可能性もあるのでは?


推測通り、米びつの半分から下、つまり、もともと家にあった分には虫は発見されなかった。




母親を呪ってもいいでしょうか?





それにしても、明日から、いや、今晩からこの米を食べてもいいのでしょうか?

友人達に相談したところ、ほぼ全員が口をそろえて「加熱すればオッケー」と 含み笑いで 助言してくれたので、しかたなく食べることに。

いつもより念入りに米を研いで、その後、いつもどおり三十分ほど水につけておいた。

さて、釜に移そうかな、と、思ってよく見たら、全員処刑したはずのゾルゲが一匹、水面に浮かんでいた。

やはり、見逃していたやつがいたのだ…。暗澹とした気持ちで飯を炊く。

しかもこの暗澹とした気持ちが今日で終わるわけではない。

また一週間後には卵が孵り、やつらが増殖しているかもしれないのだ。

この米が底を尽くまで、筆者の苦悩は続くのである。

アンハッピーエンド。








この不愉快な事件の憂さばらしに、みなさんの 愉快な(恐怖の)「蟲話」 (実話)を大募集します。

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米プレゼントは冗談ですが、本当にあなたの『蟲話』をお待ちしております。





 




 うちに頼もしい味方がやってきた。


「米びつ先生」(\1,280)だ。


 彼、米びつ先生を米びつに入れておけば、先生の発する臭気によって虫が寄り付かなくなるらしい。

既に米びつの中に虫がいる場合は、米びつのふたを少し開けておけば、蟲どもが臭いを嫌って米びつから出てゆく、という寸法だ。

 更に、米びつ先生のありがたい科学的講義によって、今まで野のものとも山のものともつかなかった蟲どもの正体が白日のもとにさらされることとなった。

以下は米びつ先生のありがたい講義の受け売りである。




 米には四大害虫が存在する。四大害虫とは、コクゾウ虫ココクゾウ虫コナナガシンクイ虫ノシメマダラメイガの四つである。


  筆者が勝手に「ゾルゲ」と名づけた虫は「コクゾウ虫」、

  「ザ・デビル」は「ノシメマダラメイガ」、

  「チュミーン」はその「ノシメマダラメイガ」の幼虫であるようだった。

  (この幼虫は糸を吐いて繭を作り、蛾の成虫へと変貌するのだ。)


四大害虫そのものは、衛生的に不良というだけであるが、怖いのは二次害虫である。

二次害虫はコクゾウムシの食いカスや、コクゾウムシの死骸などを狙ってやってくる。


  コクヌストモドキは加熱しても分解されない発ガン性のキノン類を分泌する。

  チャタテムシは消化管内にカビの胞子を多量に持ち、その中には発ガン物質を生産するカビをも含んでいる。


そこで米びつ先生の登場だ。

先生が四大害虫を追い出す、そしてコクゾウムシさえいなくなれば二次害虫もつかない、というわけである。





 さて、早速、米びつの内壁に先生を接着。

さすがは蟲を追い出すだけのことはある、先生の体臭はすさまじいばかりのガーリック臭

これから毎日おいしいガーリックライスが食べられそうです。

…と、思ったが、先生の講義によれば、米に臭いが移ることはないらしい。


出て行った蟲どもは餌がなくなって勝手に死ぬそうであるが、先生の体臭は蟲どもが死を選ぶほど強烈ということか…。

ああ、これで先生の体臭のあまりの臭さに蟲どもが嫌気をさして出て行ってくれるのを待つのみ。

先生、あとはまかせました、よろしくお願いします。


















 米騒動も気分的に一段楽してきた後日、

水河氏に頂いた栗を茹でようと、袋を覗いたところ、カビを生やしてしまっていた。

これはしまった、と思い、栗を袋からあけてみれば、栗の上でなんと、





ぶっといチュミーン型の蟲が蠕動運動を繰り返していた




 今度は栗に蟲!






 ……もう勘弁してください。

水河氏ごめんなさい(合掌)。








 




 そんなこんなで、皆さんから頂いたありがたい蟲話をぼちぼちご紹介していこうと思っております。

鋭意、編集中ですので、しばしのお待ちを…。

 引き続き、みなさんの 愉快な(恐怖の)「蟲話」 (実話)を募集しています。

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