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唯心論ノススメ 4、和の風土 日本人にとって「和の精神」は、おそらく想像以上に抜きがたいものです。 なぜならそれは、日本人自身が選択した、というよりは、 日本の風土によって、自然的に培われたものと見たほうがよいからです。 日本の動物を外国の同種の動物と比べれば、みな、ややデフォルメされたようにかわいく、小さくなっています。日本原産のウマである木曽馬と、ヨーロッパのサラブレッドとを比較してみましょう。
その体格差は明らかです。あるいは、クマはどうでしょうか?
日本最大の大型獣であるクマでさえ、諸大陸のクマと比べれば、大人と子供ほどの差があります。 ついでに、ヒトも見ておきましょう。
一般的な日本人が小柄であることは、ほぼ自明なことで、世界で活躍するアスリートには、この体格差が多くの場合、壁となってきます。 このように、日本の動物は外国の動物と比べて小柄で、それに比例するように気質のほうも、比較的おだやかなものになっているようです。 さて、次は植物を見てみましょう。日本原産の花はどれも、大陸の植物と比べ、色が淡く、やわらかなパステルカラーです。 たとえば中国原産である「ハクモクレン」の花は、全盛期には、ほとんど蛍光色かと思えるような、光味を帯びた白色です。これに対して、同じ種である日本原産の「コブシ」は、落ち着いた、清楚な白色です。 同じ種を、北アメリカに見てみましょう。「タイサンボク」という花があります。この花は比較的巨大で、非常に遠い範囲にまで香りを飛ばします。まるで自己主張の強い欧米の方々を思わせるような、強さをもっています。これらはすべて、マグノリアと呼ばれる同じ種です。 ○ コブシ 〜 季節の花300 ○ ハクモクレン 〜 季節の花300 ○ タイサンボク 〜 季節の花300 あるいは、レンギョウという花を見てみましょう。こちらの「レンギョウ5兄弟」という、レンギョウについて素晴らしくよくまとめてくださっている外部のページをご覧いただきたいのですが、日本産のヤマトレンギョウの色の淡さに注目してみてください。この淡さこそ、日本の花に特徴的なものです。 もっとわかりやすく極端な例をあげると、日本の代表的な花といえば「ヤマトナデシコ」……「ナデシコ」でしょう。ナデシコは、大抵は、品のある淡い紫色をしています。外国に目を向けて極端な例を取ると、同じナデシコ目(もく)のなかに南アフリカ原産の「マツバギク」という花があります。これは日本でも人気の花で、私の住む名古屋では街路の植え込みなどにもよく見られる花なのですが、ほとんど「メタリック」と言っていいほどの、金属質のきらめき、強い輝きを放つ、紫色をしています。 ○ ナデシコ 〜 季節の花300 ○ マツバギク 〜 季節の花300 このように、日本に自生する花は大抵は、落ちついた淡い色をしており、比較的小ぶりです。みなさまご存知の、桜の花(ソメイヨシノ)の、ほのかにくすんだピンク色を思い出していただけば、やはりそれは日本を代表するにふさわしい花だと、改めて思われることでしょう。 こうして日本の小柄な動物や、淡い色のやさしい花々を見てきますと、日本の動物や植物の「和」の側面、そして日本人の「和」の側面を引き出しているのは、気候や地味、雨風、光の具合、四季、山海などの日本の自然だと考えられるのです。日本の自然が「小さく、淡く、おだやかな」方向へ、日本に生きる動植物たちを導いているように感じるのです。 ですから、その表れのひとつである「和の精神」は、どんなに矯正しても、矯正しがたいものだと思うのです。 そう考えれば、日本人に欧米流の議論を学ばせるよりは、 唯心論を取り戻すことのほうが、私には近道に思えます。 唯物論を絶対視するのをやめ、唯心論を古い、子供っぽいなどと侮(あなど)るのをやめ、 自信をもって、唯心論は日本の伝統(トラディショナル)なのだ、と、宣言することが重要です。 ゆるキャラの全盛に見られるように、今や、日本人の心は「唯心論」を希求しています。 ゆるキャラとは、かつての日本人が普通に見ていた、「心ある人間以外の存在」への憧憬です。 今、自然のなかに心を見出せなくなってしまった日本人の乾きが、日本人にゆるキャラを求めさせているのです。 他者に心を見ないことから、犯罪が起こります。 他者を物と見ることによって、いじめや殺人が起きます。 女性を物と見ることによって、性犯罪が起こります。相手も自分と同じように、笑い、悲しみ、苦しむ、心ある人間だということが、わかりにくくなっているのです。これが唯物論の社会です。 ですからもう一度、日本人は唯心論を取り戻すべきだと、私は思うのです。 唯物論(科学)とはなんなのか、唯心論とはなんなのかを、 もう一度、社会全体が哲学的に見直し(……科学的に、ではなく、哲学的に見直し)、 きらびやかな外面ではなく、他者の内面にある「心」をこそ大事にする雰囲気が醸成されればされるほど、 自然と、人々は政治に参画し、投票率もあがるでしょう。 (つづく) |